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糖尿病と腎症

糖尿病と腎症 (2012年07月07日 土 17:02)|病気|

今日は七夕ですね。

先月のブログで、糖尿病の合併症についておおまかにお話しました。

今日お話ししたいのは、糖尿病性腎症です。

 

糖尿病性腎症は、日本では透析の原因として最も多い病態で、現時点でも増え続けています。透析は患者さんにとっても非常に負担になる(一般的には週3回通院が必要で、4-5時間院内で治療)と共に、医療費が莫大になるため、社会保障全体としても、大きな問題となっています。

 

つまり、糖尿病を治療することにより、糖尿病に起因する腎不全を予防し、透析導入に至る患者さんを減らすことは、糖尿病を治療する上で、最も重要な目標の1つです。

それでは、糖尿病をどの程度コントロールすれば、糖尿病性腎症の進行を抑制させることが出来るのでしょうか。

 

糖尿病のコントロールの指標として、最も頻用されているのは、HbA1c(患者さんはグリコヘモグロビンなんて言ってる方もおられます)です。今年の4月から基準値が変わって、お騒がせしています。患者さんへのこの説明が非常に難しい!!4月なったとたんに、測定値も基準値も+0.4ですから、患者さんもビックリ、そして誤って落胆した表情・・。この数値は、概ね1~3ヶ月程度の血糖値の水準を反映するとされ、いままでの日本の基準値では、5.8%までが正常とされています。

 

この数値を何%台にするように治療すれば、糖尿病性腎症は進行しないのでしょうか?腎機能がまだ低下する前の段階で、血糖コントロールを厳密にした場合と、それほど厳密にはしなかった場合とで、その後の腎機能の悪化の程度に、差はあるのでしょうか?

 

実は、このことを明確に証明したデータは、これまでに存在しません。これまでの臨床試験の結果を集計し、腎不全の進行や腎疾患による死亡が、血糖コントロールのレベルと関連性があるかどうかを、メタ解析という手法で検討した論文があります。

 

その結果、約3万人の糖尿病の患者さんを、2~15年観察した結果として、厳密な血糖コントロールと、緩めのコントロールとを比較すると、実際に腎機能が悪化するまでの時間や、腎不全の発症率、そして腎疾患による死亡のリスクは、いずれも血糖コントロールとは有意な相関を認めませんでした。つまり、血糖コントロールを厳密にしても、その患者さんの“腎臓病としての”予後には、あまり影響は与えていない、という結果になったのです。いままで血糖値を下げよ!!と言っていたのに、なんじゃ!?ということになってしまいます・・。

 

しかし、これは腎症や透析導入といった観点で見ただけの結果です。糖尿病を患っている患者さんの合併症は、腎症のみではありません。ほかの合併症もふくめ、トータルに評価する必要があると思います。確かに、糖尿病患者さんの、悲惨な合併症を見るにつけ、腎症の抑制のコントロールだけで語ることはできません。
腎症もふくめた、トータルな糖尿病の治療目標が求められます。



 
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